TOKYO・ARIAKE ARENA
2024 9.21 SAT., 9.22 SUN.
2024 9.21 SAT., 9.22 SUN. TOKYO・ARIAKE ARENA

【FEATURES】.ENDRECHERI.

「ファンクとは、自分の命を最大限に生きること」
堂本剛のプロジェクト“.ENDRECHERI.”が放つファンクの本質

text = Tomoyuki Mori

 

 8年ぶりの日本開催となるBlue Note JAZZ FESTIVAL。ビッグアーティストが名を連ねるなか、ひと際異彩を放っているのが、堂本剛によるプロジェクト“.ENDRECHERI.”だろう。

 90年代初めから歌手、俳優、タレントとして活躍。まさに国民的な知名度を得た堂本剛は、2002年からソロで音楽活動をスタートさせた。そのクリエイティビティが本格的に発揮されはじたのは、2005年に始動したENDLICHERI☆ENDLICHERI。インスピレーションの源になったのは、ジョージ・クリントンを創始者とするPファンク(パーラメント、ファンカデリックを含む音楽コミュニティ)。つまりオーセンティックなファンクミュージックだ。

 これまでの様々なインタビューでも語られているように、アイドル的な活動を主にしていた堂本剛は、多くの人から向けられる“偶像としてのイメージ”に違和感を覚えていたという。他者から規定される像ではなく、ありのままの自分でいられる場所と時間を生み出したいーーそういう切実な思いを抱えていた時期に出会ったのが、自己を肯定し、解放する機能を備えたファンクミュージックだったのだろう。

 約4億年前には出現していたとされる古代魚の名を冠したENDLICHERI☆ENDLICHERIは2018年にENDRECHERIに改名。2023年7月に“.ENDRECHERI.”として新たなスタートを切った。
名前の前と後ろにドットを付けたのは、何度終わってリスタートしてもいいという意味を込めているからだという。

 .ENDRECHERI.の音楽の核にあるはもちろん、ファンク。Pファンクをはじめ、ジェームス・ブラウン、スライ&ザ・ファミリーストーン、プリンスから受けた影響を独創的な解釈によって再構築した音楽性は、トラディショナルにして革新的。Gakushi(Key)、竹内朋康(G)をはじめとする凄腕ミュージシャンたちと繰り広げる自由奔放なセッションは、ライブを重ねるごとに進化を続けている。フェスやイベントにも精力的に出演し、その音楽性は既存のファン以外にも確実に浸透してきているようだ。

 楽曲を通して伝えられるメッセージもまた.ENDRECHERI.の大きな魅力。ステージでもたびたび“僕にとってファンクとは、自分の命を最大限に生きること”という趣旨のコメントを発してきた堂本剛。音楽に向き合う際の真摯なスタンスに裏打ちされたリリックは、聴き手の感情を揺さぶり、いつの間にか捉われていたものから解放されるパワーを宿している。ダンスミュージックとしての気持ちよさ、そして、思考を刺激し、自分らしさを取り戻させてくれる歌。その両軸こそが、.ENDRECHERI.の本質なのだと思う。

『HYBRID FUNK』(2018年)を皮切りに、『NARALIEN』(2019年)、『LOVE FADERS』(2020年)、『GO TO FUNK』(2021年)とコンスタントに作品を発表。これまで.ENDRECHERI.の音楽に触れたことがないという方はまず、最新アルバム『Super funk market』(2023年)の1曲目「Super funk markert」(カラフル&ダンサブルなファンクサウンドが炸裂するアッパーチューン)、2曲目の「LOVE VS.LOVE」(濃密なバンドグルーヴと美しいメロディが響き合うミディアムナンバー)を聴いてみてほしい。堂本剛へのイメージが一変し、「こういう音楽をやっているんだ」という嬉しい驚きに出会えるはずだ。

 .ENDRECHERI.のキャリアを語るうえで欠かせないのが、2023年5月に行われたイベント『LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL JAPAN 2023』。堂本剛はGeorge Clinton & PARLIAMENT FUNKADELICのステージにギタリストとしてサプライズ出演し、「Flash Light」をセッションしたのだ。昨年7月に開催されたファンミーティングで彼は、ジョージ・クリントンとの邂逅を振り返り、こう語った。「僕が出てると映像として使えないかもしれないので、1曲やったら下がりますねと(ジョージ・クリントンに)言ったら、“弾きたければ弾けばいい、歌いたければ歌えばいい”と言ってくれて。“あなたのおかげで、生きるということを選択できました”と直接伝えることができました」。

 今回のBlue Note JAZZ FESTIVALで.ENDRECHERI.とジョージ・クリントン(パーラ メント・ファンカデリック feat.ジョージ・クリントン)は同じ日(9/21)に出演する。再びセッションが実現するかどうかはわからないが(期待したい!)、堂本剛にとって特別なステージになることはまちがいない。ファンクミュージックとの出会いによって、辛さのなかに立ち止まるのではなく、“生きることの美しさを愛する”と言う思いに至ったという堂本剛=.ENDRECHERI.。その最新ステージをぜひ体感してほしいと思う。

 
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LIVE INFORMATION
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Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN 2024
2024 9.21 sat., 9.22 sun.
Open12:00pm Start1:00pm
https://bluenotejazzfestival.jp
★ .ENDRECHERI. は 9.21 sat. に出演!


▶︎9.21 sat.
NAS / PARLIAMENT FUNKADELIC feat. GEORGE CLINTON / MISIA & ⿊⽥卓也BAND / TANK AND THE BANGAS / .ENDRECHERI.
▶︎9.22 sun.
CHICAGO / MARCUS MILLER / NILE RODGERS & CHIC / SNARKY PUPPY / CANDY DULFER

森 朋之(もり・ともゆき)
音楽ライター。 1990年代の終わりからライターとして活動を始め、延べ5000組以上のアーティストのインタビューを担当。主な寄稿先に、『音楽ナタリー』『リアルサウンド』『アエラドット』『ビルボードジャパン』など。